書評の仕事 印南敦史 ワニブックスPLUS新書 2021
年間500冊本を読むには?
著者の印南敦史氏は「ライフハッカー(日本版)」「東洋経済オンライン」「ニューズウィーク日本版」など、数々の媒体で書評を手掛けている。書評だけで月間40本、そのほかにもコラムやエッセイを執筆している。そんな著者の読書術を含めた「仕事に対する考え方」が本書では披露されている。
今でこそ一日1~2冊、年間500本の書評を執筆している著者だがもともとは遅読家だったそうだ。それが毎日締め切りに追われ執筆しているうちに、自然とたくさんの本を読めるようになった。それは特別な能力があった訳ではなく、毎日インプットとアウトプットを繰り返すことで身についたそうだ。本をたくさん読むことは才能ではなく日々の「読む」そして「書く」ことで誰にでも身につく力であると筆者は主張している。
本を読むことは知識を頭に入れること。書評を書くことはそこから得た知識を整理すること。このサイクルを繰り返すうちに頭の中に知識が定着し、新しい本を読む際にでも「ここは知ってるな」という箇所が現れ、自然と読書のスピードは上がるはずだ。
書評を書く際に注意しなければいけないこと
インターネットの発達によって誰にでも文章を公開できる時代になった。そうした中で筆者は「ネタばれ」「真偽不明の情報をもとにした文章」などの問題を危惧している。書き手は文章を書く自由を享受すると同時に、最低限のクオリティーを維持することが大切だという。私も書評を書いている人間の端くれとして、筆者の危惧を心にとめておきたい。
Exit イグジット 相場英雄 日経BP 2021
異次元金融緩和に出口(Exit)はあるのか
アベノミクスの三本の矢の一つである「異次元金融緩和」をテーマとした経済小説。
主人公は出版社の経済担当記者である。出版社の営業マンから、いきなり記者に異動を命じられるところから物語は始まる。経済記者として様々な出来事に遭遇しながら、やがて異次元金融緩和の弊害に直面し、物語は展開していく。
本書はフィクションであるが、時代背景や経済情勢の設定は事実そのものである。登場人物に財務大臣や日銀審議委員が登場するが、実在の人物をモチーフにしているのだろうとピンとくる描写があって面白い。
エンタメ小説として楽しめる要素と中央銀行の独立性や通貨の信認、政府の財政政策という経済についても考えさせられる要素が盛り込まれている。物語を楽しみながら現在の日本経済が抱える闇について考えさせられる一冊だ。
沈黙のWebライティング —Webマーケッター ボーンの激闘— MdN 2016
今人気のWebライターになりたい人への指南書
Webライターは本業としても副業としても、非常に人気が高まってきている。本業として稼いでいる人なら月収100万円以上稼いでいる人もいるそうだ。副業としてもPC一台あれば簡単に始められることができ、在宅ワークとして取り組んでいる人も多い。
本書はそんなWebライターを目指す人向けのバイブルだ。2020年10月時点で16刷もの発行部数を誇っている。
全621ページとかなりのボリュームだ。しかし、とある旅館のWebサイトを再生させるというストーリーが設定されている。登場人物たちによる会話形式で話が展開され、すらすらと読めてしまう。初心者にとって小難しいWeb用語もすんなりと理解できるよう配慮されている。
Webライターに不可欠なSEOライティングとは?
SEO(検索エンジン最適化)とはコンテンツを検索エンジン上でより上位に表示させるテクニックである。SEOのテクニックとして「サイトの更新頻度を増やす」「サイトに外部リンクを多く設定する」などが挙げられる。
SEOライティングも、これらのテクニックの一つである。コンテンツ内の記事を検索エンジンに評価してもらうための「文章の書き方」である。
Webライターを目指す人に限らず、自分のサイトを検索エンジンにより上位に表示させ訪問者数を増やしたいという人にとっても有効だろう。
米テーパリングと日経平均
日経平均が日足三角持ち合いを下抜けてきている。
米国のテーパリング開始時期が早まるとの観測が出てきているからではないだろうか。FRBやイエレン財務長官は「現在のインフレは一時的であり、雇用が回復しない限りテーパリングは時期尚早」との発言をしているが、果たしてどうだろうか。
私は米国の雇用は夏以降、回復をとげると考えている。実際、米連銀の中でもテーパリングを求める声が複数出ている。
テーパリングを開始するとなれば住宅ローン担保証券(MBS)の買い入れ縮小からだろう。住宅価格がこのまま上昇を続ければ、一般市民からの反発は大きなものとなっていくからだ。
英国でも議会において「現在の金融緩和は中毒だ」との批判が出ている。
ニュージーランドもインフレ目標を上回った物価の推移が続いている。
物価推移に特殊な事情を抱える日本以外の先進国の中で、米国だけが金融緩和を長期化させるとは考えにくい。8月のジャクソンホール会合は大きなターニングポイントになるかもしれない。
仮にジャクソンホール会合で米テーパリングについて、前倒しするといった趣旨の発言がでると株式市場は大きな調整を余儀なくされるだろう。
その際、日経平均は2万7000円前後まで下落すると考えている。
20歳の自分に受けさせたい文章講義 古賀 史健 星海社新書(2021)
すべてのブロガーにおすすめ
本書は「文章はリズムで決まる」を信念に、数々のヒット作を生み出したフリーランスライターの方によって書かれた書籍である。
「20歳の自分に」という言葉がタイトルで使われているが、年代問わず文章を書くことが好きな人にとっては一読の価値があるだろう。もしかすると、すでにこの書籍に目を通したことがある方もいらっしゃるかもしれない。
文章のリズムとは?
読みにくい文章とは「文」そのものがおかしいのではなく、文と文のつなげ方がおかしいのだと筆者は指摘する。
文章のリズムは「論理展開」によって決まる。普段、私たちがしている会話は往々にして論理が破綻していることが多い。会話をしている感覚で文章を書くと読みにくい文章になってしまうのはそのためだ。
論理破綻の解決策として「接続詞」を有効活用すべきだそうだ。美しい文章よりも「正しい文章」を書くことが、リズムが良く読みやすい文章を書く秘訣なのだ。
本書ではこの他にも「構成」「読者視点」「編集者視点」という切り口で、正しい文章の書き方を伝授してくれている。
私自身もこの本から学んだことを、今後のブログ執筆に活かしていきたい。
日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門 もう代案はありません 藤沢数希 ダイヤモンド社 2011
経済音痴の人にも多少経済に詳しい人にもおススメ
本書は月間100万PVを誇るブログ「金融日記」を主宰する藤沢数希氏によって書かれた経済学の入門書である。著者は外資系投資銀行でトレーダーとして活躍していた経歴を持ち、まさに資本主義の最前線で戦ってきた人物である。それだけに、経済に関する造詣は深い。
経済学の本というと難解なイメージを抱く人もいるかと思う。しかし、本書では経済学の基本を平易かつコミカルな文体で書かれており読みやすい。数式も極力省かれている。
私が興味深かったのはリーマンショックはなぜ起きたのか、という解説である。当時、世界中で話題になった出来事だが、本書の解説ほどわかりやすいものは無かった。いまだにリーマンショックのからくりが理解できていない人にとっては本書はおススメである。
他にも経済学の基本である「GDP」「経済政策」「国際金融」などの基本的なエッセンスが多数取り上げられている。
巻末には「もう代案はありません」と称して、日本がとるべ政策についての筆者の新自由主義的な見解が示されている。
もう一度経済を学びなおしたい人、経済学部の学生などに本書を手に取ってみてほしい。
人新世の「資本論」 斎藤幸平 集英社新書 (2020)
マルクスが世界を救う?
SDGsや気候変動問題といった地球環境に関する話題が盛んにニュースで取り上げられるようになってきている。しかし、著者はこのようなものは「現代版大衆のアヘン」であると一蹴している。
温暖化対策のために行っている「エコバック」や「ハイブリットカーを買う」ということは、気候変動を遅らせるための時間稼ぎでしかない。
このような消費者の行動は、結局は資本家の利潤となり、利潤は永遠の経済成長を続ける。経済成長が続く限り環境破壊を止めることはできないと、筆者は主張する。人間の経済活動が地球表面を覆いつくしてしまっているのだ。これを「人新世の時代」と呼ぶ。
資本主義の黎明期、安価な労働力を利用して先進国は発展を遂げたが、現代では難しくなってきている。それと同じように化石燃料を代表とする「自然」という地球環境を通じて経済発展を遂げることも限界にきている。人々の欲望は無限だが、地球は有限なのである。
資本主義の矛盾が見え始めた現代、このような問題が発生することを予言していた人物がいた。それが「カール・マルクス」である。
電気自動車を例にとってみよう。電気自動車に不可欠なリチウムイオン電池は様々なレアメタルを必要とする。レアメタルのほとんどはグローバルサウスと呼ばれる発展途上国に存在する。それを採掘する際、莫大なCO2排出や、その地域の環境破壊をもたらす。一説によれば世界中の車が電気自動車に置き換わっても、CO2排出量はたった1%しか減らないそうだ。
一見、先進国で環境問題が解決されているように見えても、実は遠く離れた地域にその問題を転嫁しているに過ぎない。これを「外部性」と呼ぶが、資本主義社会において、そのような問題が発生することを予言していたのがマルクスなのである。
本書の著者で新進気鋭のマルクス研究者である斎藤氏は、このような問題についてどのような解決策を提示するのか。環境問題や資本主義社会の限界といったような問題について、少しでも関心のある方には、ぜひ読んでもらいたい。