凡人読書家の書斎(読書&ときどき投資)

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エネルギー(上・下) 黒木亮 角川書店(2013)

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全世界を舞台に「エネルギー」を巡って、奔走する者たちの物語

本書は石油、天然ガスといった国家にとって必要不可欠な資源について描かれた物語である。資源ビジネスは、単にモノを買って売るという単純なものでなく、政治・金融先物市場・国際情勢・環境保護団体などの様々な利害関係者が関わりあって成り立っているということを知ることができる。

 

・商社

この物語では、大手総合商社と中堅商社のエネルギー部門に所属する商社マンが登場する。大手商社マンの方は、実直で堅実。中堅商社マンの方は野心あふれる昔ながらの商社マンというように、それぞれの個性が際立っていておもしろい。

 

・国際情勢

エネルギービジネスと切っても切り離せないものが国際情勢だ。各国の政策・戦争なのどの国際情勢に翻弄されるビジネスマンたちの苦闘がうかがえる。

 

先物取引

この物語のもう一つの伏線として描かれているのが、原油先物取引デリバティブ)の世界だ。原油金融商品の一つとしてとらえ、トレーディングで大金を稼ごうとしている金融マンがどのように暗躍しているのかが分かる。また、そのような行為の危うさも知ることができる。

 

環境保護団体

資源開発をするうえでネックになってくるのが、環境NGOや地元の人々との折衝だ。石油や天然ガスは人々の生活を支えるうえで欠かせないものだが、原油流失などの環境破壊のリスクも伴う。そのバランスをどのようにとるのか。環境保護団体の苦闘も垣間見れる。

 

金融機関や商社などで様々なビジネスに携わってきた著者だからこそ書ける作品である。