鉄の骨 池井戸潤 講談社文庫 2011
突如「談合課」に飛ばされた主人公の悪戦苦闘
主人公「富島平太」は中堅ゼネコンに就職し、現場監督としての仕事にやりがいを感じていた。現場の職人との折衝に戸惑いつつも「立派な建物を建てる」というゼネコンマン魂にあふれていた。
ところが突如、まったくの畑違いである事務職へと異動になる。しかもそこは「談合課」と揶揄される部署であった。
建設業界の闇「談合」
ピュアな性格の平太は談合という闇の中、様々な葛藤・苦悩を抱える。建設業界を知り尽くした上司や談合を取り仕切る「フィクサー」との出会いの中で、果たして談合とは本当に悪なのなのだろうかとも考える。自分のしている仕事に対して、世の中の役に立つのか立たないのか自問自答していく。
談合とは、もちろん公共の利益を損ねる犯罪だ。しかし、建設業課にとって談合なしでは会社の経営が成り立たないという側面もある。そのあたりの業界が抱える構造的な問題について、考えさせられる内容となっている。
読後は晴れやかな気分になれる
登場人物も多彩で、平太の交際相手。その交際相手に迫る平太とは真逆の大人びたエリート銀行マン。物語のサイドストーリーとして展開される恋模様も、より一層この作品を引き立たせている。
談合という闇の中を疾走した平太が最後に見た景色とは?重いテーマを扱いつつも、最後は心を晴れやかにさせてくれる池井戸ワールド全開の作品だ。